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眠るためだけじゃなかった?- Négligé / ネグリジェの昔と今



ネグリジェの歴史と、親密さをまとう服



柔らかな布は、いつも眠りのためだけに作られていたわけではありません。




ベッドルームと外の世界、その境界に置かれた衣服。





Model in floral print nightgown and negligee decorated with Calais Lace, by Nathalie, photo by Pottier, 1963
Model in floral print nightgown and negligee decorated with Calais Lace, by Nathalie, photo by Pottier, 1963




レースやシルク、透ける素材とともに語られることの多いネグリジェですが、

その歴史を辿ると、そこには女性たちの暮らしや美意識、

そして「装うこと」と「解放されること」の関係が映し出されています。




さて今回は、ネグリジェの歴史と、現代のランジェリーへと続くその役割を辿ってみます。





ネグリジェとは?



ネグリジェ(Négligé)は、フランス語の négligé に由来する言葉です。




その意味は、「整えすぎていない」「くつろいだ」「気取らない」。

意外かもしれませんが、もともとネグリジェは“セクシーなナイトウェア”を指す言葉ではありませんでした。




本来は、フォーマルな装いから解放された、軽やかな室内着や私的な装いを意味していたのです。




つまり最初から「寝るための服」だったわけではなく、

むしろ公的な装いと私的な時間のあいだに存在する衣服でした。





17〜18世紀ネグリジェは“室内の装い”だった



17〜18世紀のヨーロッパでは、女性たちは朝の支度や室内で過ごす時間に、

軽いガウンやネグリジェを身につけていました。





Morning ガウン
Morning ガウン




この時代の正装は、コルセットや重いスカートを伴う非常に構築的なもの。

そのためネグリジェは、そうした衣服を脱いだ後の、

比較的自由な時間のための装いとして存在していました。





しかしそれは完全なプライベートウェアでもありません。

親しい客人を迎えたり、サロン文化のなかで

会話を交わしたりする場面でも着用されることがありました。





現代でいう「パジャマ」とは違い、ルームウェアと社交服の中間のような存在だったのです。





重い装飾から少しだけ解放される時間。

ネグリジェは、誰かに見せるための装いというより、自分の輪郭に戻るための服だったのかもしれません。





19世紀ナイトウェアとしてのネグリジェ



19世紀になると、産業革命による繊維産業の発展とともに、衣服のあり方も変化していきます。




Nightgown / French
Nightgown / French





綿素材の普及や洗濯技術の向上によって、人々の衛生意識は高まり、

家庭内で着る衣服の役割も明確になっていきました。

この頃からネグリジェは、徐々に「夜に着る衣服」としての性格を強めていきます。




コットンやリネンを使った実用的なものから、

レースや刺繍を施した繊細なものまで、その表現はさまざまでした。

ヴィクトリア時代には慎み深さが重視される一方で、寝室の衣服にも美意識が持ち込まれます。




人に見せるためではない空間にも、美しさを求める感覚。

ネグリジェは、そんな時代の価値観を静かに映していました。





20世紀映画が作った“ロマンティックなネグリジェ”



20世紀中頃になると、ネグリジェのイメージは大きく変化します。




映画、雑誌広告、そしてランジェリーブランドのビジュアル。

それらの影響によって、ネグリジェは単なるナイトウェア以上の意味を持つようになりました。





ナインハーフ
ナインハーフ





シルクが肌を滑る姿。

薄いレース。

ベッドルームの親密な空気。




ネグリジェは次第に、眠るための服というより

ロマンスや女性らしさ、官能性を演出する衣服として描かれていきます。




熱いトタン屋根の猫
熱いトタン屋根の猫


私たちが思い浮かべる「ネグリジェらしさ」の多くは、

この時代に作られたイメージなのかもしれません。

スクリーンの中でネグリジェは、眠りよりも夢を演出する衣服になっていきました。





お熱いのがお好き
お熱いのがお好き




現代のネグリジェランジェリーとファッションの境界へ


そして現代。





ネグリジェは再び、その役割を変えつつあります。





スリップドレス、ランジェリードレス、シアー素材のレイヤード。

かつて寝室の中にあった衣服は、少しずつ外の世界へと現れ始めました。





感じられている方も多いように

ランジェリーとファッションの境界は、以前よりずっと曖昧になっています。






これは新しい現象のようにも見えますが、

歴史を振り返れば、実はネグリジェは最初から“境界の衣服”でした。






室内着でありながら社交性を持ち、私的でありながら美しさを求められる存在。






現代のランジェリーファッションは、

その歴史の延長線上にあるとも言えるのではないでしょうか。





おわりに



ネグリジェの歴史を辿ると見えてくるのは、「眠るための服」の物語だけではないということ。

そこには、女性たちがどこまで装い、どこで解放されるのかという問いがありました。





フォーマルと私的空間。慎みと官能。隠すことと見せること。

そのあいだを行き来してきた一枚の衣服。





私が高校生だった頃にも、一度ランジェリーをファッションに取り入れるスタイルが流行した時代がありました。

(流石に当時に写真はありませんが💦笑)





そのなかでも特に取り入れやすかったのが、ネグリジェやスリップのようなアイテムです。

レースや柔らかな素材を重ねるだけで、どこかナイトパーティのような華やかさや非日常感を纏うことができる。





それは単に「下着を見せる」という感覚ではなく、

ランジェリーが持つ親密さやロマンティックな空気をファッションとして楽しむ感覚だったように思います。





振り返ってみると、ファッションはいつも一定ではありません。

本来の用途から離れ、新しい意味を与えられたかと思えば、また別の形で原点へと戻っていく。




ネグリジェもまた、寝室のための衣服でありながら、社交や装飾、そしてファッションの世界を巡ってきました。

そして今もなお、ランジェリーとファッションの境界は揺れ続けています。





ランジェリーは、隠されるものでも、見せるものでもなく、そのあいだに存在している。





歴史を知ることで、私たちが今当たり前に見ているランジェリーやファッションも、

また違った景色に見えてくるのかもしれません。






講師 sakura



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